補完的レバレッジ比率(SLR)
2021年03月16日
「補完的レバレッジ比率」
(supplementary leverage ratio)
日経に出ていて感覚的には知っていたのですが
詳しくは分からないのでまとめてみます。
まず、一般的なレバレッジ比率についてで、字の通りレバレッジが掛かっている比率になり
レバレッジ比率(%)=(他人資本÷自己資本)×100
財務レバレッジ比率 =(総資本÷自己資本)
と、なっています
●金融機関のレバレッジ比率規制
1988年、国際的な銀行システムの健全化、競争上の不公平を軽減する為、
自己資本比率等の国際統一基準が出来ました、バーゼル規制(バーゼルⅠ)です
あくまで基準である為、法律的な効力は無くて各国が適用・参考にしてます。
●バーゼルⅠ(1988年)
銀行の自己資本比率最低水準8%が定められました
Tier1 (株主資本)+ Tier2 (劣後債、有価証券含み益等)/信用リスク ≧ 8%
※Tier2全体にはTier1総額、期限付劣後債にはTier1の50%相当額という算入上限がある
信用リスク=融資先や保有する有価証券の発行体の貸し倒れリスク
信用リスク額=融資額や保有する有価証券の額(与信額) × リスク・ウェイト
リスクウェイト:OECD加盟政府 0%、OECD在銀行20%、住宅ローン50%、事業法人・個人100%
●バーゼルⅠ(1996年、改訂)
マーケット・リスク(短期的売買を行うトレーディング勘定の金利リスクや価格変動リスク)
管理の高度化から改訂しました
Tier1(株主資本)+Tier2(劣後債、有価証券含み益等)+Tier3(短期劣後債)
/信用リスク+マーケット・リスク ≧ 8%
●バーゼルⅡ(2004年)
バーゼルⅠの問題として企業の大小に関わらず100%の信用リスクで歪みがあり
実務に充分に対応できなくなって行ったため、バーゼルⅡが合意されました。
Tier1(株主資本)+Tier2(劣後債、有価証券含み益等)+Tier3(短期劣後債)
/信用リスク+マーケット・リスク+ オペレーショナル・リスク ≧ 8%
まず、信用リスクについては標準的手法・内部格付手法の選択制になりました。
・標準的手法(バーゼルⅠがベースでリスク・ウェイトが変更)
リスクウェイト:国・地方公共0%、政府関係機関10%、地方三公社20%、
銀行・証券20%、事業法人(中小以外格付けに応じ)20%~150%or100%
中小企業・個人75%、住宅ローン 35%、延滞債権(引当率)50% ~ 150%、株式100%
・内部格付手法
リスクウェイト:
デフォルト確率(PD: Probability of Default)は
基礎的内部格付手法・先進的内部格付手法共に銀行推計
デフォルト時損失率(LGD: Loss Given Default)は基礎的内部格付手法は各行共通の設定
先進的内部格付手法共は銀行推計
・オペレーショナル・リスク
事務事故、システム障害や不正行為等で損失が生じるリスクについては、
これをオペレーショナル・リスクと位置づけ、そのリスク相当額を
自己資本比率算出時に計上しています。
リスク相当額の算出方法は、粗利益を基準に計測する「基礎的手法」「粗利益配分手法」と、
過去の損失実績などをもとに計測する「先進的計測手法」のうちから、銀行自らが適する手法を選択します。
また、今までは金融機関の自己資本率規制のみでしたが、新たに第二の柱
(金融機関の自己管理と監督上の検証)
第三の柱(開示を通じた市場規律)が制定されました
・第二の柱
文字色
金融機関自らがリスクを適切に管理し、リスクに見合う適正な自己資本を維持するという「自己管理型」のリスク管理と自己資本の充実の取組みを期待すること、当局は、各金融機関が自発的に創意工夫をしたリスク管理の方法について検証・評価を行い、必要に応じて適切な監督上の措置を求めること等が示されている。
・第三の柱
「第1の柱」と「第2の柱」の開示内容の充実を通じて、
市場規律の実効性(監視機能)を高めること
●バーゼル2.5(2009年)
リスクが銀行推計など高度な手法で自己資本を下げる仕組みとなっており、
一次証券化商品と再証券化商品の区別もなくて、
格付けも商品に見合ったリスクに設定されているかも不透明だった。
サブプライム問題が発生し、金融機関が証券化商品に関連して多額の評価損を
計上し、証券化商品のリスク捕捉が不十分など遂にバーゼル2の限界が来ました。
金融危機へ応急的な意味で2009年に合意されました。
再証券化商品に対する資本の積み上げ(資本賦課)の強化、
証券化商品の格付を利用する際の要件強化(デューディリジェンスを求める)、
トレーディング勘定(マーケット・リスク)の資本賦課の強化
(トレーディング勘定で保有する証券化商品の資本賦課は原則として銀行勘定
(信用リスク)に準じた方法(外部格付に応じたリスク・ウェイトの適用)で算出)、
「ストレス VaR(バリュー・アット・リスク)」の導入、
追加的リスクの捕捉、といった見直しがされました。
ここまで来ると複雑になり頭が付いていけません、再証券化商品の積上げのみ記載します。
証券化商品(一次)は貸付金や不動産など将来の利益になる資産などを証券化した物で、
再証券化商品は裏付資産に一以上の証券化商品を含む証券化商品、証券商品の証券です。
例として貸付金銭債権(貸金返還請求権)などの資産を裏付けとして発行される証券が
資産担保証券(ABS:Asset Backed Securities)になり、
更にABSのうち、社債や企業向け貸付債権などを裏付けとするものが
債務担保証券(CDO:Collateralized Debt Obligation)になります。
再証券化商品の保有(再証券化エクスポージャー)に対しては、
一次証券化商品の保有(証券化エクスポージャー)に比して
およそ1.1 倍から 3.5 倍のリスク・ウェイトを適用となりました。
●バーゼルⅢ(2010年)
ここまで来てようやくレバレッジ比率が出て来ます、
レバレッジ比率=Tier1/エクスポージャー額 ≧ 3%
Tier 1(普通株式等Tier 1 +その他Tier 1)
エクスポージャー額は、①オンバランス、②デリバティブ取引、
③レポ取引等の証券金融取引(SFT)、④オフバランスのエクスポージャーの合計として算出
他にもカウンターパーティリスクを入れたり、普通株式等Tier1の最低水準引き上げ
資本保全バッファー、カウンターシクリカル資本バッファー、ベイルイン導入
流動性カバレッジ比率、安定調達比率、G-SIBs・D-SIBsサーチャージなどなど複雑です。
米国で導入された補完的レバレッジ比率(supplementary leverage ratio)はレバレッジ比率を
更に厳しくしており、従来レバレッジ比率が3%以上だが世界の金融システム上重要とされる米銀は5%になる
また、分母となる投融資量にデリバティブなど帳簿外取引も加えた。
金融業界では規制が厳しいとの声も上がっている。
2020/04/01 米FRBがコロナの影響により2021/03/31まで規制を緩和した
銀行が保有する米国債やFRBに預ける準備預金を同比率の算出から除外することを認めると発表。
※米国債やFRBに預ける準備預金は分母に含まれます
継続の有無が焦点になっているが、継続すればレバレッジの加速懸念
終了すれば、引き締め・預り金受付停止・比率上げの為、米国債購入の控えや売りが発生する事も
っていうか200兆円の国債発行可決したんだから、規制延長しないと買い手が減る可能性も
日本もそこまで買えるとも思えないし(保有12608億$)、中国が買ってくる場合もあるか。
(supplementary leverage ratio)
日経に出ていて感覚的には知っていたのですが
詳しくは分からないのでまとめてみます。
まず、一般的なレバレッジ比率についてで、字の通りレバレッジが掛かっている比率になり
レバレッジ比率(%)=(他人資本÷自己資本)×100
財務レバレッジ比率 =(総資本÷自己資本)
と、なっています
●金融機関のレバレッジ比率規制
1988年、国際的な銀行システムの健全化、競争上の不公平を軽減する為、
自己資本比率等の国際統一基準が出来ました、バーゼル規制(バーゼルⅠ)です
あくまで基準である為、法律的な効力は無くて各国が適用・参考にしてます。
●バーゼルⅠ(1988年)
銀行の自己資本比率最低水準8%が定められました
Tier1 (株主資本)+ Tier2 (劣後債、有価証券含み益等)/信用リスク ≧ 8%
※Tier2全体にはTier1総額、期限付劣後債にはTier1の50%相当額という算入上限がある
信用リスク=融資先や保有する有価証券の発行体の貸し倒れリスク
信用リスク額=融資額や保有する有価証券の額(与信額) × リスク・ウェイト
リスクウェイト:OECD加盟政府 0%、OECD在銀行20%、住宅ローン50%、事業法人・個人100%
●バーゼルⅠ(1996年、改訂)
マーケット・リスク(短期的売買を行うトレーディング勘定の金利リスクや価格変動リスク)
管理の高度化から改訂しました
Tier1(株主資本)+Tier2(劣後債、有価証券含み益等)+Tier3(短期劣後債)
/信用リスク+マーケット・リスク ≧ 8%
●バーゼルⅡ(2004年)
バーゼルⅠの問題として企業の大小に関わらず100%の信用リスクで歪みがあり
実務に充分に対応できなくなって行ったため、バーゼルⅡが合意されました。
Tier1(株主資本)+Tier2(劣後債、有価証券含み益等)+Tier3(短期劣後債)
/信用リスク+マーケット・リスク+ オペレーショナル・リスク ≧ 8%
まず、信用リスクについては標準的手法・内部格付手法の選択制になりました。
・標準的手法(バーゼルⅠがベースでリスク・ウェイトが変更)
リスクウェイト:国・地方公共0%、政府関係機関10%、地方三公社20%、
銀行・証券20%、事業法人(中小以外格付けに応じ)20%~150%or100%
中小企業・個人75%、住宅ローン 35%、延滞債権(引当率)50% ~ 150%、株式100%
・内部格付手法
リスクウェイト:
デフォルト確率(PD: Probability of Default)は
基礎的内部格付手法・先進的内部格付手法共に銀行推計
デフォルト時損失率(LGD: Loss Given Default)は基礎的内部格付手法は各行共通の設定
先進的内部格付手法共は銀行推計
・オペレーショナル・リスク
事務事故、システム障害や不正行為等で損失が生じるリスクについては、
これをオペレーショナル・リスクと位置づけ、そのリスク相当額を
自己資本比率算出時に計上しています。
リスク相当額の算出方法は、粗利益を基準に計測する「基礎的手法」「粗利益配分手法」と、
過去の損失実績などをもとに計測する「先進的計測手法」のうちから、銀行自らが適する手法を選択します。
また、今までは金融機関の自己資本率規制のみでしたが、新たに第二の柱
(金融機関の自己管理と監督上の検証)
第三の柱(開示を通じた市場規律)が制定されました
・第二の柱
文字色
金融機関自らがリスクを適切に管理し、リスクに見合う適正な自己資本を維持するという「自己管理型」のリスク管理と自己資本の充実の取組みを期待すること、当局は、各金融機関が自発的に創意工夫をしたリスク管理の方法について検証・評価を行い、必要に応じて適切な監督上の措置を求めること等が示されている。
・第三の柱
「第1の柱」と「第2の柱」の開示内容の充実を通じて、
市場規律の実効性(監視機能)を高めること
●バーゼル2.5(2009年)
リスクが銀行推計など高度な手法で自己資本を下げる仕組みとなっており、
一次証券化商品と再証券化商品の区別もなくて、
格付けも商品に見合ったリスクに設定されているかも不透明だった。
サブプライム問題が発生し、金融機関が証券化商品に関連して多額の評価損を
計上し、証券化商品のリスク捕捉が不十分など遂にバーゼル2の限界が来ました。
金融危機へ応急的な意味で2009年に合意されました。
再証券化商品に対する資本の積み上げ(資本賦課)の強化、
証券化商品の格付を利用する際の要件強化(デューディリジェンスを求める)、
トレーディング勘定(マーケット・リスク)の資本賦課の強化
(トレーディング勘定で保有する証券化商品の資本賦課は原則として銀行勘定
(信用リスク)に準じた方法(外部格付に応じたリスク・ウェイトの適用)で算出)、
「ストレス VaR(バリュー・アット・リスク)」の導入、
追加的リスクの捕捉、といった見直しがされました。
ここまで来ると複雑になり頭が付いていけません、再証券化商品の積上げのみ記載します。
証券化商品(一次)は貸付金や不動産など将来の利益になる資産などを証券化した物で、
再証券化商品は裏付資産に一以上の証券化商品を含む証券化商品、証券商品の証券です。
例として貸付金銭債権(貸金返還請求権)などの資産を裏付けとして発行される証券が
資産担保証券(ABS:Asset Backed Securities)になり、
更にABSのうち、社債や企業向け貸付債権などを裏付けとするものが
債務担保証券(CDO:Collateralized Debt Obligation)になります。
再証券化商品の保有(再証券化エクスポージャー)に対しては、
一次証券化商品の保有(証券化エクスポージャー)に比して
およそ1.1 倍から 3.5 倍のリスク・ウェイトを適用となりました。
●バーゼルⅢ(2010年)
ここまで来てようやくレバレッジ比率が出て来ます、
レバレッジ比率=Tier1/エクスポージャー額 ≧ 3%
Tier 1(普通株式等Tier 1 +その他Tier 1)
エクスポージャー額は、①オンバランス、②デリバティブ取引、
③レポ取引等の証券金融取引(SFT)、④オフバランスのエクスポージャーの合計として算出
他にもカウンターパーティリスクを入れたり、普通株式等Tier1の最低水準引き上げ
資本保全バッファー、カウンターシクリカル資本バッファー、ベイルイン導入
流動性カバレッジ比率、安定調達比率、G-SIBs・D-SIBsサーチャージなどなど複雑です。
米国で導入された補完的レバレッジ比率(supplementary leverage ratio)はレバレッジ比率を
更に厳しくしており、従来レバレッジ比率が3%以上だが世界の金融システム上重要とされる米銀は5%になる
また、分母となる投融資量にデリバティブなど帳簿外取引も加えた。
金融業界では規制が厳しいとの声も上がっている。
2020/04/01 米FRBがコロナの影響により2021/03/31まで規制を緩和した
銀行が保有する米国債やFRBに預ける準備預金を同比率の算出から除外することを認めると発表。
※米国債やFRBに預ける準備預金は分母に含まれます
継続の有無が焦点になっているが、継続すればレバレッジの加速懸念
終了すれば、引き締め・預り金受付停止・比率上げの為、米国債購入の控えや売りが発生する事も
っていうか200兆円の国債発行可決したんだから、規制延長しないと買い手が減る可能性も
日本もそこまで買えるとも思えないし(保有12608億$)、中国が買ってくる場合もあるか。
コメント